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最高のお別れ

栄光の立役者ハインケス

 ユップ・ハインケスの最後の歩みは感動で鳥肌が立つものとなった。試合後センターラインからハインケスは、すでに選手が飛び跳ね踊っていたファンブロックまでの60ー70メートルをゆっくりと歩いた。一歩一歩を踏みしめながら、赤と白が喜びを奏でる方へと進んでいった。「ユップ!ユップ!ユップ!」とファンは大歓声で近づいてくる指揮官を迎えた。選手はひざを地面について、ユップを崇める仕草をした。ハインケスの喜びは解き放たれた。これまで一度も見せたことがないくらい嬉しそうなハインケスがそこにいた。最後の歩みを味わっていた。

 「素晴らしい雰囲気だった。これ以上ないハイライトだった」とハインケスは振り返った。バイエルン最後の試合となったドイツカップ決勝でも勝利し、監督として初のカップ優勝を祝うとともに、ドイツ勢として史上初のトリプル達成という歴史的偉業を成し遂げた。ピッチ上では選手たちが、そんなハインケスにビールかけをしようと躍起になっていた。

 びしょびしょになったハインケスは「もうこんなことが起こらないのが嬉しい。スーツが臭くてかなわない」とテレビインタビューに上機嫌で答えていた。カール・ハインツ・ルンメニゲは「彼は今シーズン唯一のミスを犯したね。スーツをひとつしか持って来なかったことだ」と冗談を言っていた。

「まさにパーフェクト」

 スーツを身にまとったハインケスは、ピッチサイドで最後の瞬間まで全力で仕事に取り組んでいた。VfBシュツットガルトを3:2で下し、可能な限り最高のお別れをパーフェクトに決めた。「チームは自分たち自身と私のために素晴らしい贈り物をしてくれた。3冠は唯一無二だ」とハインケスは喜んだ。

 「君に今起こっていることを素晴らしいと思う」とルンメニゲはハインケスへの称賛を嬉しく思っていた。スポーツディレクターのマティアス・ザマーは「彼の明晰さ、プラン、緻密さ、勤勉、知恵といった真価を認められた」と褒め称え、ダニエル・ファン・ボイテンは「彼はまさにパーフェクトだ」と絶賛した。