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愛らしい危険さ

「強者」のビダルがバイエルンを牽引

 熱狂の渦に包まれたエスタディオ・ダ・ルスでの90分間の死闘のあと、「強者」がピッチ上でインタビューを受けていた。すると、アルトゥーロ・ビダルがリポーターの持つマイクに向かって話をしているところに、後ろからトーマス・ミュラーが近づいて来て、悪そうな顔をしながら片言のスペイン語で何かを呟いていた。そして今度はフアン・ベルナトがやって来て、ビダルの耳たぶに後ろからデコピンをお見舞いしていた。顎までタトゥーを入れ、頭はモヒカンという特殊なスタイルのビダルが、逃げるチームメイトの姿を見て、笑いながら優しそうに「嬉しいよ」とコメントしていた。

 マティアス・ザマーは、ここ数週間でFCバイエルンの欠かせない大黒柱に成長した28歳の同MFについて、「アルトゥーロはよく、少し危なそうに見られがち。だが、彼は無害だよ。本当に愛らしい青年だ」と説明。ビダルは、リスボンでもバイエルンに1-1の同点ゴールをもたらし、勝利に対する強い気持ちが感じられるプレーで、チームの準決勝進出に貢献した。しかも、1stレグでは決勝点すらも決めている。

 「もしかしたら、彼にまだチャンピオンズリーグ制覇の経験がないからかもしれない。彼は全てを注いでいる。運動量も本当に豊富だし、玉際の争いを避けることも一度もない」と、主将フィリップ・ラームも絶賛。確かにビダルは、昨年ユヴェントスでCLの決勝まで進出し、そこで敗北を喫している。ラームは、「彼はCLの試合に多くのエネルギーを注いでいて、それがチームを牽引している」と続けた。

「かなり非理性的」

 「純粋なる闘志(ヨスア・キミッヒ)」、「尋常ではない(ペップ・グアルディオラ)」— これらが、ベンフィカとの2ndレグでビダルが決めたゴールに対するそれぞれのコメントだ。同MFは、エリア内中央から左足を振り抜き、完璧な軌道のボレーシュートをネットに突き刺した。指揮官は、「アルトゥーロは極めて重要。特にこういったビッグマッチではね」と述べ、シーズン前半でほとんどの試合に出場し、今では代わりの効かない存在となったビダルの力強いパフォーマンスを評価した。

 昨夏はコパ・アメリカに参加していたため、遅れてのチーム合流となっていた同選手が、「最初は全てのことに慣れなければならなかった。だが、今では試合を楽しんでいるところや勝利への意欲を見せることができている」と語り、これまでの道のりを振り返る。ザマーは、「アルトゥーロは素晴らしい成長を見せた。彼は今、最高に調子がいい。試合を決めるゴールを挙げているし、真面目だし、対人戦も強い。しかも、かなり非理性的なプレーをするため、相手にとって予測がつかない。彼の本能的な行動が機能している」と分析した。

 チームメイトも同じように驚きを示している。最終ラインからいつもその姿を見ているキミッヒが、「彼の勝利への貪欲な気持ちが、彼をそのまま表現している。彼のプレスの様、対人戦に臨む様、全てがまるで、彼が最後の一人かのようだ」とコメント。もちろん、ビダルは試合中にダメージを負うこともある。そういったシーンは、ここ数週間でもたくさんあった。だが、この強者は必ず持ち堪えている。ザマーは、「アルトゥーロは常にプレーしたがっている。おそらく、向こうずねを明らかに骨折するとかでなければ、彼はプレーするのを止めないだろうね」と冗談混じりに話した。